地図記号や等高線など一応の見方を勉強したけれども、実際に山登りでどう活用したらよいのかが、はじめのうちは分からないと思います。これには場数と言いますか、経験が必要で、ほとんどの登山者が結局地図の見方がわからないまま、GPSに頼ったり、一応紙地図は持っていこうかという事になると思います。

そこで

 読図においての実践的な着目点をご説明します。
 参考の地図を次にお示ししますが、わかりやすいように敢えて1/25000地形図を拡大していますので、結構等高線が開いて見えるところも実スケールで見るときつい傾斜ですので、斜度感覚はこの際考えないでください。


 今回はバリエーションルートとして一般道を離れた尾根筋を上り下りすると仮定します。地図を見るにあたって、まず全体像を眺めてみます。点線は仮定のルートです。


計画として
(1)登り利用の場合
 ①の林道を伝い、林道の終点から尾根に取り付き1102mのピークを目指す計画です。ルートは分かりやすく、すべてを尾根通しとします。まず俯瞰的に見てみましょう。そのためにはピークからの派生尾根を検討します。そして逆S字状のルートイメージを頭に描きます。さて、出来上がったイメージ。P1102(P=ピーク)へ向かう尾根上を南東方向に150mの標高差を登り主稜線に取り付いたのち、南西方向に尾根が伸びていきその後、南から南東へという形となります。


では、登りの場合はどこに着目したらよいのでしょうか。
①林道>崩壊している可能性がある。崩壊している場合は迂回可能か、別ルートにシフトするかを検討するための事前の心構えです。
②林道終点>林道は斜面を削って作られているので、そこからの尾根への取っ付きがガレていたり、コンクリートの壁になっていたりと様々なことが考えられます。
③等高線感覚が緩くなってきたら尾根筋に出るんだというイメージを作ります。
④南西に尾根が変化した時に等高線を見ると痩せ尾根になるという認識をする。痩せ尾根の場合はそこしかないので道を迷ったりルートを外すことは少ないですが、等高線に表現されていない10m未満の岩や崖は存在することを念頭に、引き返すこともバリエーションルート攻略の基本です。
⑥やや引き締まった尾根筋が南東に伸び始めると標高差30mでピークにたどり着きます。

(2)下り利用の場合
※初めてのルートは、できる限り登りを選定することが基本です。特に沢筋はそうです。そして、引き返す勇気。”折角来たから行ってしまおう”はNGです。下りは、結構リスクがあります。なぜなら、尾根ではどうしようもない崖に出会ったり、谷では滝があったりして、さりとて夕方になってから、また登り返す気力も無くなってくるからです。

 今回は下る場合を考えてみましょう。まず、大まかに見て北西に尾根は下りやがて北向きとなって次には北東方向に延びています。そこには痩せ尾根があるなあと記憶します。ある地点から北西の斜面の下り標高差150mはあるなあ。と目処を付けます。
 尾根を下る場合は、そこから延びる派生尾根に入りやすいため、登りよりも慎重に迷い込みに対しての注意配分をすることです。前後しますが、最も最初に注目するのは、林道です。以外に林道に出てしまえばと簡単に考えて下ったら、大崩壊で通れない事って結構あります。即遭難に結びつく事案です。⑤は結構、なだらかな尾根で水平の所やだらだらのぼりもあるかもしれません。どこが稜線なのかがつかみにくいところです。特にガスっている場合は。⑤の地点には西に延びる尾根がはっきりしていて、そちらに行ってしまうかもしれません。そして、北東に変針するポイントも不明瞭だとしたらそのまま北の支尾根に吸い込まれる可能性もありますね。ここは要注意ポイントとなります。よく周りを観察して北東方面を注視していると尾根が引き締まってきて、方角的にもOKであれば、ほぼ間違いありません。とはいっても油断は禁物です。いつの場合も思い込みはダメです。北東に曲がるように見せかけてなんとなしに北西の支尾根に迷い込んでしまう事はままあることです。原因は、行く方向がブッシュの可能性もあるし、獣道が北西に曲がってついていることもあり得ます。また、テープが巻いてあるかもしれません。それにつられて入り込み、とことん下ってしまった先に遭難が待ち構えているのです。あれっと思ったら確実なところまで引き返すことです。
 さて、無事に北東の尾根に行ったとしましょう、そこには痩せ尾根が待っています。地図上では崖のマークも崩壊地のマークもありませんが、10m以内の崖や、崩落は表現されない場合もあることを覚悟して、その場合の回避策を考えましょう。次には③のポイントです。ここが一番迷い込みやすいポイントとなりそうです。もし、そのまま進んで1本北側の支尾根を下った場合、どこまで下っても林道に出会いません。この迷いそうな支尾根は、左側がやや深い谷となっています。本来計画の尾根は急な切れ込みが左にありません。これも、一つのチェックポイントとなります。950m近辺には針葉樹林のマークがあって、関西方面では杉などの植林地帯を予測できます。枝打ちなどで使う作業道や、作業用のテープ類も出てくるかもしれません。直径30センチもあるような杉の木に赤いテープが巻いてあっても、作業用の目印の可能性もありますので、”ピンテみーつけた”といって単純に行かない事です。

 読図、とはこういった感じです。如何に、地図を見てその地形にはどんな事が潜んでいるのだろうとかといった状況を想像する力にほかなりません。

 読図の講習会もいろんな形で開催されているようですが、そこで勉強されたところで、実際の山登りに生かせなければ意味がありませんし、講習の内容は、その性質上、基本的な見方に終始しているように思います。だからどうするの?という点を強化していってください。
 地図を読む楽しさはマスターした後にじわっと感じてくるものなのです。

投稿者

yamatano

1958年(昭和33年)生まれ 近畿の山々2,000m以下の低山のあらゆる尾根や谷からアプローチする山登りをしています。六甲山は250回以上、金剛山は400回以上、大峰、台高、鈴鹿の山々を主体に、登るブッシュハイカーです。